床ずれの予防と介護
寝たきりや座りっきりの人にとって、もっとも注意が必要なのは床ずれです。
床ずれは一度できてしまうと簡単には治らず、当人はもちろん介護する人にも肉体的にも精神的にも非常に大きな負担になるだけでなく、場合によっては合併症を引き起こしてしまいます。
正しい知識をもとに、効果的な床ずれの予防と介護をしましょう。
1) 床ずれの発生原因とできやすい箇所
2) 床ずれを発生・進行させない日常のポイント
3) 正しいスキンケアで床ずれの発生・進行を防ぎましょう
4) 最適な床ずれ防止具を活用しましょう
同じ姿勢を長時間取ることで、圧迫により骨の突出部や脂肪が少ない部分の血流が悪くなって壊死してしまいます。これが床ずれ(褥瘡:じょくそう)で、悪化すると骨まで達してしまうこともあります。この圧迫が大きな原因ですが、その他にも外的要因でズレ、湿潤、摩擦や、内的要因で運動能力、貧血、栄養状態、基礎疾患などが絡み合って起こる総合疾患です。
床ずれの良くできる部位は、個人差はありますがだいたい決まっています。「骨の突出がある」・「体重がかかる」・「皮下脂肪が少ない」・「ズレが生じやすい」などの部位です。
体位によって床ずれのできやすい部位は変わります。寝ている状態ですと、かかと・くるぶし・股関節付近・お尻の上・腰骨・肩・耳・後頭部など。座っている状態ですと、かかと・お尻・肘・肩などになります。
・体位変換
寝たきりや車いすの方は身体の向きや姿勢を変えることができないか、できたとしてもかなり制限されてしまいます。床ずれ予防には2時間に1回の体位変換が必要とされていますが、健康状態などによってさらに短い時間での体位変換が必要になります。
・寝具の選び方と使用方法
ねまきやベッドシーツに硬い素材が使われていたり、ねまきのしわは湿ると硬くなります。これが床ずれの原因となりますので、縦横いずれかに伸びる柔らかい素材のものを選びましょう。ベッドシーツはきつく巻き込まずにゆったりと使用します。ねまきは身体にフィットさせてしわができないように装着します
・栄養状態
見落とされがちなのが栄養状態の悪化です。傷が治るために必要なタンパク質・炭水化物・ビタミン・鉄・銅などが不足すると床ずれは治りにくくなります。医師や看護婦と相談して、 とくに制限がなければタンパク質を多く含んだ食品を食べさせてあげましょう。
・ベッドのギャッジアップは30度まで
ベッドを30度以上ギャッジアップすると、お尻に体重のほとんどの圧力がかかる上、身体がずり落ちるために背中や腰の皮膚に摩擦やズレが起こって床ずれができる危険性が高くなってしまいます。
ギャッジアップする時は、身体がずり落ちてしまわないように、まず膝を曲げて身体を固定してから上体を上げます。
・床ずれ部位のマッサージは厳禁
床ずれが圧力により血行が悪くなって発生しますが、初期症状である発赤ができたときにマッサージをすることは厳禁です。皮膚の表面が発赤程度でも、その皮膚の下に広い範囲ではもっと強い損傷を受けていることがあります。床ずれ部位のマッサージによって、さらに損傷が強くなってしまうのです。
基本は「常に清潔を保ち、湿潤を避ける」ということです。
・できるだけ入浴をしましょう
床ずれができていると入浴は良くないと思われがちですが、入浴は皮膚の清潔を保つうえに血行をよくしますので、床ずれの予防や治療に大きな効果があります。状態が良ければ治療用のフィルム材などで床ずれ部位を密閉などしてできるだけ多く入浴しましょう。軽い発赤なら密閉も必要ありません。
・床ずれの部位は乾燥や日光浴は避けましょう
皮膚の湿潤は床ずれの原因になるので、蒸れの防止と適度な乾燥は必要ですが、床ずれ部位をドライヤーなどで乾燥させることは絶対にしてはいけません。乾燥させると再生した組織が脱水で死んでしまったり、細菌が増殖する原因となってしまいます。また、太陽光の紫外線は殺菌力が強く、皮膚の再生を阻害する可能性があります。室内も含めて太陽光が直接床ずれの部位に当たらないようにしなければいけません。
・消毒は注意が必要です
一般的には洗浄が十分であれば、消毒は必要ないと言われています。仮に消毒を行ったとしても、細菌は数時間後には増殖して元の数に戻ってしまいます。強い消毒液は床ずれの治療に必要な細胞や再生した組織にも損害を与えるので、十分な注意が必要です。
・できるだけおむつは避けましょう
介護する側にはおむつの使用は非常に便利ですが、密閉度の高いおむつは蒸れやすいので、床ずれの原因になる可能性があります。できるだけ、尿器や便器が使えるようにしましょう。また、おむつを使用する時は、濡れていればできるだけ早く交換するか、撥水性クリームの塗布などで肌に排泄物が接触しないようにしてください。
・洗浄は十分にして、清拭は厳禁です
床ずれ部位に残っている薬品や膿、細菌などを洗い流すことは治療にいいことです。洗浄用ノズルをつかって生理食塩水や水を強く吹きかけて洗い流します。消毒液や洗剤を混ぜてはいけません。床ずれが進行してえぐれている時も十分に洗浄します。
ただし、清拭は摩擦を加えることになるので弱った皮膚を傷つけてしまいます。また、布に付着した細菌を床ずれ部位にこすりつけてしまったり、床ずれ部位の細菌や膿を周囲の皮膚に広げてしまうことになるので、清拭はしてはいけません。
床ずれの最大の原因である圧力に対して、もっとも効果的な予防方法は体位交換ですが、実際には昼夜問わず2時間に1階の体位交換を行うことは介護者のことを考えるとなかなか困難です。床ずれ世防具は圧力分散を考えて開発されていますので、使わない状態に比べて体位交換の回数を減らすことができます。
床ずれ予防具はタイプによって長所や短所がありますので、使用者にあったタイプを選びます。必要以上に効果のある物を使用すると動きにくくなったり、起きあがりにくくなったり、逆に寝心地が良くなることで起きてこなくなり、寝たきりなってしまうことがありますので注意が必要です。
・床ずれ予防具の選び方
床ずれ予防具を使用すれば体位交換をしなくても良いと考えている人がいますが、床ずれ予防具は圧力を分散するのであって、全くなくなるわけではありません。あくまで床ずれ予防をお手伝いするものなので、体位交換は必要です。
・必要以上に沈み込まないかどうか
厚みがありすぎて必要以上に沈み込むと、体の両サイドや肩や腰などの突出した部位に圧力が集中してしまいます。
・底づきしないかどうか
床ずれ予防具に寝た時に、体の一部がベッドマットレスや布団などについてしまうと、それ以上圧力分散ができません。底づきしない方が、圧力分散能力が高いといえます。
・押し返してこないかどうか
空気や水を使った床ずれ防止具で注意しなければならないことは、量が多すぎると押し返す力が強いということです。押し返す力が強いと逆に床ずれの危険性が大きくなります。押し返してくる力を制御するために、体重によって空気圧調整ができるタイプがいいでしょう。
・表面はザラザラしていないかどうか
寝たきりの方の皮膚は弱っていることが多く、少しの擦れで傷ついて床ずれの原因となってしまいます。指を縦横に滑らせてみてザラザラするものは避けましょう
エアーマットの選び方
エアーマットを使用すれば体位交換をしなくても良いと考えている人がいますが、エアーマットは圧力を分散するのであって、全くなくなるわけではありません。あくまで床ずれ予防をお手伝いするものなので、体位交換は必要です。
・セル型かどうか
細長い独立型のエアセルが並んだエアーマットは一体型のエアーマットに比べて床ずれ発生率が2分の1程度になります。エアセルは20本以上が好ましいです。エアセルの高さが低いと簡単に底づきして、それ以上圧力分散ができません。十分な高さの物を選びましょう。
・素材は耐久性に優れているかどうか
塩化ビニルを使ったものは、耐久性に乏しく破損しやすいので、ウレタンフィルムかポリマーフィルムなどを使ったものがよいでしょう。
・エアーポンプは静かかどうか
エアーポンプのモーター音は、本人ばかりか同室の方にも耳障りな物で気を遣います。静かで耐久性のあるものにしましょう。
・エアー噴出型かどうか
床ずれができてしまっている人にはエアー噴出型のマットは好ましくありません。全身の湿潤状態を防ぐためにエアーを噴出するエアーマットもありますが、創部の乾燥や、エアー噴出のためにマットの内圧を高くして低圧保持ができないなどの場合があります。ただし、床ずれが発生していない方が床ずれ防止に使用することに問題はありません。



